「どうも、色々お世話になりました」

「また、何かあったらここに来なさい、いくらでも治療してあげるわ」

「ありがとう御座います」

「またね、春菊。今度来たときはもっと料理上手くなってるから」

「ははは。楽しみにしてますよ、姫様」

 

 

 

 

 


17話「芋頭」

 

 

 

 


「なんか、久しぶりな感じがするなー人里」

 途中まで鈴仙に送られて帰ってきた我が住まう人里。すごく久しく感じられる。もう何年も帰ってきてないみたいだ。

「あ、慧音だ」

 春菊への帰り道。人里の中で何やらオロオロしている慧音の姿を発見した。いつも見たく、キリッとしている彼女の姿はどこかに置いて行かれたようで。

 あれは、あれでかわいいな。

「おーい慧音―!」

 僕が呼ぶと彼女はハッとこちらをむいて、ものすごいスピードでやってきた。

「どうしたの慧音――」

「どうしたもこうしたもあるか!」

 天誅と叫ぶのではないか、と言わんばかりにすぐさま僕の頬を両手で掴み、お得意の頭突きをおみまえされた。

「〜〜〜〜〜〜っ!?」

 物凄く痛かった。はい、尋常ではありません。半獣なめてはいけません。チラリと慧音を見ると角が生えていた。

 あ、あれ?今昼だよ?満月じゃないよ?上白沢さん森へおかえり。

「な、なにすんだよ!」

「お前はもっと考えて行動しろ!凄く心配したぞ!」

「なんの事かさっぱ(ry」

 第二撃がやってきて、いよいよ僕の頭はバカになる。

「〜〜〜〜っ」

「魔理沙から聞けば、毒キノコ食べて永遠亭でお世話になったそうじゃないか」

 あまりの頭痛に僕は言葉を失い必死に頷いた。この痛み。妹紅が嫌がるのもわかる。

「まったく、お前はそういう緩いところがダメなんだ」

 息を吐き、慧音は倒れている僕に手を差し出す。

「あまり、心配を掛けないでくれ。お前は私の大切な『人』なんだ」

 慧音……。

 僕はその綺麗な手を取って立ち上がる。僕には前科があるから、慧音が心配するのもわかる。でも、こうあからさまに心配してくれるというのは恥ずかしいものもあり、そして嬉しいものもある。

 慧音がみんなに好かれる理由もわかる気がする。

 でも――

「悪い、慧音、その――道の真中で告白されると俺としても気恥かしさが……」

「え……?コク……ハク?」
 
「いや、だって私の大切な『人』って……」

 周りを見る。あれだけ大騒ぎをしたので当然人だかり――ではなく、野次馬が群がってくる。

「ちちちち違うぞ!?か、勘違いしないでくれ智也!これはだな……そういう意味で言ったのでは――」

「ひゅーひゅー先生お熱いねー」

「ようやく先生にも春が来たみたいだな!」

 野次馬共がいよいよ囃し立てる。慧音は顔を真っ赤にさせて首がもげるのではないだろうか、と隣で心配するほどに高速で首を振った。

 思う。慧音の頭突きの強さは首にあるのではないだろうか……?

「み、みなさん!これは違います!ご、誤解ですよ!」

 HAHAHAHA!!慧音の慌てぶりに野次馬が笑い、さらに囃し立てる。もはやこうなってはこの野次馬に慧音が敵う筈がない。

 ましてや顔を真っ赤にさせて冷静さを失っている慧音の言葉なんてみんなには通じないだろう。

「だ、だから違いますってば!!」

 さて、先程から隠れて僕に殺気を放つ大工供(プラスα)の視線と今にも沸騰しそうな慧音をそのままにして置くわけにも行かず、ましてやなぜか見えた未来で僕が丸焼きにされるビジョンが映し出されたので、慧音の可愛い顔をもう少しだけ堪能した後に声を上げて手を叩いた。

 残念だけど、もういいかな。慧音もなんか用事あるみたいだし。

「はいはい。皆さんもうすぐお昼ですよーってか、あんたら自分の持ち場放棄してどうするよ。ちゃちゃ戻って早く昼ごはん食ってきてくださいねーはい、解散!」

 ぞろぞろと自分の持ち場に戻る野次馬共。何事もなかったかのようにスルリと戻る辺り恐ろしい人たちだよ。

「春菊―!戻ってきたならあとで昼食わせろよー!」

「お待ちしておりますよー!」

 こうやって何人か声をかけてくれる人が居るというのは素晴らしいよな。感動しちゃう。僕もそれなりに売れてきている証拠だ。

「……智也」

 冷たい声が響いてきっちりと頭をホールドされる。

「……」

 もう何も言うまい。

 

 

 

 

 

 

 


「智也は意地悪だ!」

「……俺は妖力使って頭突きする方がどうかしていると言いたい。いつか死ぬぞ、俺」

  頭を打つ=脳細胞が減少する=馬鹿になる、という法則が成り立つのならば、僕はきっと今ので大学から幼稚園で教わった全てもことを忘れるだろう。

 ちくしょー頭は危ないんだぞ!内出血とか腫瘍とか色々できちゃうんだぞ!

「大丈夫だ。智也は頑丈だからな」

 でもいいやー久しぶりにとても面白いもの見れたし。

「智也、さっきの事は――」

「慧音、わかってっから」

慧音が僕をそういう感情で見ているってことなんてありえないしさ。

 と、言うよりもしそんなことが起こっても僕が全力で『拒絶』するだけだけどねー。

 僕はそういう感情で見ちゃいけない人間だと思うからさ。

「そうか、ということはやはり私をからかっていたんだな」
 
「まぁねー痛みの代わりに可愛いのを見れたし、結果オーライだけど」

「かわっ……!?」

 ……川?

「川がどうかしたの?なに、人里辺りの川、もしかして増水した?」

 いや、でも最近雨降ってないしな。

「いや、なんでもないんだ。……忘れてくれ?」

「?」

「……まったく、智也、もしかして毒で性格までも侵されたか?」

「??」

 い、いや正確はあんまし変わってないような気がしますけれども……。

 むしろ慧音がオカシイって。

「それで……なんかあったの?」

 なんか、このままではもう一度頭突きがきそうなので僕は話題をふることにした。

「なんか、すんげー困ってたみたいだけれども」

「……おぉ、そうだ!」

 何かを思い出して、慧音は途端、いつもの――いやそれ以上にキリっとした顔で僕を見た。

「親父殿が妖怪に襲われたらしい」 

 ……なぜだろう、この時僕は嫌な予感しかしなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 


あとがき。


最近ネタ不足。一応はプロットは組んでいるのですが(妄想という名の)どうも、最近パッとしません。

料理も描写が旨くかけずに薄いといわれて……。


うっ……うっ……これだから文才のない奴は……。

でも、まだメジャーなキャラ出してないんですよねー紅魔館メンバーとか\射命丸/とか、幽々子様とか妖夢とか。