こんにちは。智也です。今、僕は山に山菜採りに出かけています。何故かというと「春菊」は大変な赤字であるからです。
食料等は僕の日々の実験ですべて消え去り、そのための食費、食材費が半端なく掛かりました。
おかげで大部分の味が見えてきたのですが僕は最後までやり遂げるタイプなので、爺さんがためていたお金とけー姉からもらったおこづかいの貯金がすべて消滅しますた。
うん。やっちゃZE☆
そのために、食糧等は僕がこの身一つで取りに行かねばならなくなりました。
そのために、僕は今山にいます。
「甘藍」
山に出かけて、まず、後悔したこと。それは何故山にくわしい人を連れてこなかったのか、ということだった。
失敗した。本当に失敗した。
僕はリュックサックを背負いながら激しく後悔する。
つまりは、道に迷ったということになる。
「俺のアホ!このオタンコナス!」
と自分を責め立ても、何も始まらないので取りあえずとしては念のためにもってきたコンパスを頼りに進む。
と、途中までは正常な働きを見せていたコンパス君だが、途中で錯乱し始めた。踊狂ううコンパスの針をしばらく見届けた僕は、溜息に似た声をあげて座った。
しばらく、そうしていても致し方あるまいと、立ち上がってまた歩き始めると今度は何故か目まいがしてきた。
目の前が霞み、視界がブレル。なんともいえぬ快楽と心地さが胸を焼いて僕は意識を手放しかけた。
「なんだ……これは……?」
突然の症状に僕は腰をおろせざるおえなかった
腰をおろして、息を整えても、あの気持ち悪い感覚は無くならない。
しばらく経った後で、僕は意識を完全に手放した。
次に目が覚めた時は知らない天井だった。
「知らない天井だ……」
なぜか暖かくて心地よい。僕は上体を起こして、そしてようやく僕がベットの上で寝かされて、なおかつここが家の中であることを知った。
まだぼやける頭で回りを見渡す。少なくとも春菊ではない、と断定できる。
やっと覚醒し始めて、再度確認する。そこでけー姉の家でもないことに気がついた。
では、誰の家だろうか?
「お、目を覚ましたか」
言葉がする方を向くと、白黒の服に金髪の少しウェーブがかかった女の子が立っていた。
そこから、僕は魔法使いを思い浮かべた。
「気分はどうだ?」
「……」
まだぼやけているのか、それとも急な展開に頭がついていけないのか。僕はぼーっとその少女を見た。
なるほど、確かに美少女である。って……違う違う。
「君は……?」
「私は霧雨魔理沙。普通の魔法使いだぜ」
「俺は大貫智也。人里で「春菊」を営んでいる才のない料理人だよ」
僕が立ち上がろうとすると霧雨さんは慌てて止めた。
「無理に動かない方がいいぜ、瘴気にだいぶやられたみたいだからな」
瘴気?どこかで聞いたことがあるような気がする。
「それにしても、魔法の森を一人で出歩くなんて、お前よっぽどのHか?」
魔法の森!僕は霧雨さんの言葉で思い出した。
魔法の森は、化け物茸の胞子が舞っており、普通の人間は森の瘴気に長時間耐えられない。そのため、人間だけでなく妖怪もあまり寄り付かない場所となっている。と、慧音が言っていた。
「ともかく、今はまだ安静にしていた方がいいぜ」
「ありがとう。霧雨さん」
「……魔理沙、って呼んでくれ」
魔理沙と呼ばれる自称魔法使いは少し、笑顔を見せてそう言った。
魔理沙はこの家に一人でくらしているのだという。家族は?とは聞かなかった。いや、聞けなかった。
一人ぐらしをしている魔理沙にとって、僕が作るごくふつうな家庭料理は約2週間ぶりだという。前は宴会などで食べたらしい。
ただ、僕が作る料理は魔理沙が思っている以上に違うものだろうけど。
「む……!食べたことないな、コレ」
介護してくれた恩返しに僕は部屋の掃除と晩ごはんを作った。
薬品やら、魔法書(?)やらでほぼ埋もれていた家は僕のただいなる働きと共に奇麗に整頓されてかつての家としての機能をはたしている。
「美味しい?」
僕がそう聞くとほうばるように食べていた魔理沙の首が縦に動く。晩御飯はオムライスだった。今、この家にある食材でうまく作れるのがこれだけだったこともあるが、彼女はこれを大層気に入ったようだ。頻りに「おかわり」を求めてくる。
「智也は料理人なんだってな。こんなに美味いから店ももうかってるんだろ?」
魔理沙がオムライスをすべてたいらげると、僕に言った。僕はかすかに首を振り、肩をすくめる。
「いや、まったく。そもそも。この幻想郷で客として僕の料理を食べたことがある人なんてまだいないよ」
そう話すと魔理沙はちょっと不思議そうな顔をした。
「へー……そうなのか」
僕はもう一度大きく頷くと、窓から外を眺めた。
もう夜遅い。さて、どうするべきか……。
「……帰るか」
そう言って立ち上がると魔理沙は慌てて僕をとめた。
「お、おいおい。夜の森は危険だぜ。今夜は泊っていけよ」
「え……い、いや。それは……」
ダメだろ。常識的に考えて。女の子と屋根の下のお泊りは色々危なすぎる。僕だって、男だもの。
「……いいのか?」
しばらく考えて、僕一人にこの夜に魔法の森を抜ける自信はない。僕は慎重に、一応はためらうそぶりを見せて僕はそう言った。
「別にかまわないぜ。それに、私にもう一度同じ治療をさせるのか?」
その言葉を聞き、僕は頷いた。
今夜、女の子の家に泊まることがきまりました。やったZE☆
一方、慧音宅。
「……」
「ん?どうしたの?慧音」
月を眺めて慧音と酒を交えていると、突如、慧音がちょっと怒った顔を作った。それに気がついた私は声をかける。
「……ふしだらな考えが頭をよぎった」
「ぶっ!」
思わず酒を噴き出して、私は自分でも驚くほどに顔を真っ赤にしてうろたえた。
「なななな、なに言って(ry「智也の」――は?」
首を振って、すごく難しそうな顔をして慧音が言う。
「智也、帰り遅いな」
「え?ええ?……彼なら春菊なんじゃないの?」
「灯りが点いてなかった」
そう……。と答えておいて私は、もう一度慧音の顔をみる。
「……」
「……」
ちょっとした沈黙が続いて、しばらくたって慧音が口を開く。
「智也……帰ったらお仕置きだな……」
「……なんで?」
「なんとなく」