「おら、この酔っ払い共、さっさと起きろ。んでもって朝飯食ってとっとと帰れ」

 

「……春菊」

 

「んだよ」

 

「変なことしてないでしょうね」

 

「ふっ、そのセリフ後十年してから言うんだな」

 

 パコーン!

 

 ……痛い。

 

 

 

 

 

 

 

24話「和三盆

 

 

 

 

 

 

 

 

 今朝の朝食はかなりオーソドックスである。白米味噌汁、川魚の塩焼き。茶漬けもあればいいが、まぁこんなものであろう。

 

 いつもならもっと良く朝は食べるほうなのだが、如何せん豪酒共が食っては飲むものだからな、朝は軽めにしておかないと胃が持たない。

 

「いただきます」

 

『いただきます』

 

 合唱と共に箸をすすめる。ちなみに、店内である。

 

 布団等は自分たちで干させてあるので心配はいらないが、きちんと洗えよと口をそろえて言われた。

 

 ……別に霊夢たちが寝ていた布団にうずくまる程欲情もしていないし、なによりそこまで変態ではない。

 

「こう、春菊の朝食って私たちとあまり変わんないんだな」

 

「どっかの誰かさんが夜まで飲んでは食っての暴飲暴食をしていたからな、朝は軽めにしておいたんだよ。っていうか、俺の朝食なんて他とあんまし変わんないぞ」

 

 ギロリと萃香を睨んでから口を開いた。

 

「だいたい、お前ら酒のことになるとはっちゃけるよな。こちらの事情も考えずに」

 

「あら、私はそんなに飲んでないわよ」

 

「どの口が言うかどの口が」

 

 霊夢だって最初はなんか冷静だったけど結局意識が失くなるまで飲んでいるわけで。

 

「お前らを泊める身にもなれよ」

 

「いいじゃないか、美少女4人もお泊りなんて、本当はそっちが嬉しいんじゃないのかい?」

 

 笑顔で言われましても。まぁ、確かに顔とか体格とか色々合わせて美少女ってことは納得できるけどなぁ。

 

「あらあら、春菊の顔が助平顔に」

 

「なるか、ボケ。ま、確かに役得って思えばそれなりに吉かな」

 

「ふふーん、遂に私の魅惑に気がついて……わ、わ!ホント角は止めてって!」

 

「子供は黙りなさい」

 

「なにを!私はもう何百年と生きているんだぞ!春菊のほうがよっぽど子供だ!」

 

 軽く受け流して箸を進めた。何百年生きていこうがなんだろうが身体が幼児体型じゃあね。

 

「それに、巷では私のような体型を好む男もいると――だから!角は!」

 

「あぁ、知っているぜそれ。確か外来人から流行した言葉の意味にそれに似たものがあったな。……なんだっけ、確か『ろりこん』だったけな」

 

 ……おい、なんじゃそりゃ。

 

「あら、なら春菊はその『ろりこん』なのね」

 

「違うっつーの。俺はどちらかと言えば小町のような人が好みだ」

 

「おや、嬉しいこと言ってくれるね」

 

 少し顔を赤らめながらも笑みを崩さない小町さん。と、言うか幻想郷。それは流行らせてはいけないよ。

 

「けっ、男は結局胸なんだね――うわぁ!ごめんなさい!」

 

 こめかみをグリグリしてやる。これって結構痛いんだよね。

 

「くっ、やられっ放しだと思うなよ!これでも鬼なんだぞ!」

 

 すかさず反撃を試みる萃香が立ち上がる。そこへすかさず弁慶の泣き所へ脛キック。

 

「〜〜〜ッ!」

 

 そして腿カンアタック。電光石火の早業で二連撃コンボを決めた僕は同時に脛と腿を抑える萃香を座らせる。

 

「食事中です」

 

「うぁ……えげつねぇ」

 

 魔理沙が顔を歪ませるが知った事ではない。誰であれ食事中に暴れるのは禁止。え?僕はどうなのかって?あれは萃香が余計なことを言うからであって正当な防衛です。

 

 ……違うような気がするけど。

 

 まぁ、ただ角弄ったりこめかみグリグリしていただけだからな、萃香は立ち上がって戦闘態勢に入ろうとしていたし、そこの違いで判断してほしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「小町!貴方はまたサボっていたそうじゃないですか!」

 

「げ!四季様!?」

 

 5人で世間話をしながら朝食を取っていると春菊の扉が開かれて女の子が入ってきた。

 

 また女の子か。そして幼女か。この幻想郷の幼女率はどうなってるんだ。

 

 そして大概がえらく強い妖怪だったり地位が高く長生きしているんだよね。

 

 しかしながら今は食事中、話に聞くところの小町の『上司』であることがわかったが朝食中なのでしばらくは待ってもらいたいな。それに小町の助けてくれ的な視線が痛い。

 

 と、いうわけで。

 

「四季様と言いましたか、今はご覧の通り朝食中です。食事が終わるまでまってはいただけないでしょうか」

 

 何か言いたそうだったのでその前に言葉を重ねた。

 

「小町から伺っております。貴方は閻魔様なのですよね?人の家に勝手に入った挙句に朝食の妨害までするのですか?閻魔というお方が」

 

 そこまでキッパリと言うと四季さんが顔を一瞬顰めたがゴホン、と咳払いして

 

「貴方は、確か春菊だったかしら。私は閻魔です。そして彼女は死神。仕事をサボっている彼女を放っておくわけにはいきません。

ですが、まず人の家に勝手に入ったことを謝りましょう。そして朝食を邪魔する義理もありませんですし……」

 

 チラリと小町を見る。僕は頷いて言葉を繋いだ。

 

「朝食が終わり次第引き渡しましょう」

 

「ちょ、春菊!この裏切り者!」

 

 許せ、小町。閻魔様に喧嘩を売るほど僕は馬鹿でもないのだ。大人しく捕まれ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 後、大人しく小町さんは連れていかれました。